前回の続き。
【3日目】
朝3時起床。こんなに早く起きる必要もないが、他の人の動く音で目が覚めた。空は曇りがちといったところ。
5時過ぎ出発。ちょうど朝日が差し込んで、細い花火のような花を照らした。
五色ヶ原に別れを告げ、湿原を抜けて鳶山へ向かう。
谷向の高山は雲に覆われ、五色ヶ原のテン場あたりも霧の中だった。早く出発して正解だった。
急な下りを終えて越中沢乗越からは広く緩やかな登り。途中、富山市街に虹が出ていた。
越中沢岳の展望はよく、今日のゴールであるスゴ乗越小屋とその向こうにそびえる薬師岳が見える。明日はあれを登らなければならない。
越中沢岳からは相当に急な下りで、ロープを使ったり岩場に張り付くような難しい場所もあった。
スゴノ頭で20分ほどゆっくり休憩し、砂地の崩落箇所を越える。
10時半ごろ、スゴ乗越小屋に到着。
コースタイム6時間に対して5時間くらいで来れたから、結構甘めの設定がされていそうだ。
小屋は薬師の端にちょこんと乗っかるようで、樹木の中に慎ましく建っていた。一泊しないと来れない距離にあり人も少ない。落ち着いて過ごせそうだ。
昼ご飯にカップ麺を食べ、ベンチで本を読んだり昼寝をして過ごす。割と近くで雷が鳴っていたけれど、雨は降らなかった。
晩御飯はフリーズドライのカレー。まあまあ美味しい。
19時ごろ、雷が鳴っていったのも嘘のように穏やかで、静かに夕暮れになった。テン場から西の眺めはよいとは言えないが、手前を遮る松の影が真っ黒になるのを拝めた。
【4日目】
12時半のバスに間に合わせるべく、1時半起床、3時発。濡れてもいいようにカッパを着る。夜露を蓄えた笹の葉の裏面にライトが当たって銀色にちらついている。
半月が出ている間は山影が方角の目印になっていたが、次第に霧が出てくると不安になって立ち止まり地図を確認する。風は強くないものの尾根筋は寒く上着を着こみハイマツの陰で休む。
間山ではまだ真っ暗で何も見えず、歩くうちに霧の中でだんだん明るくなってきた。
小さなピークを巻いたところで霧から抜け出して視界が開けた。
太陽が薬師・北薬師を明るく照らしていた。一番良いタイミングでこの場所に来れたのではと思えるくらい。
北薬師まではやせた岩稜で緊張感のある歩行。
カールもはっきり見て取れ、斜面をお玉ですくったように丸く削られていた。
北薬師から登りつめると、今回の最高峰である薬師岳(2,926m)だ。
室堂や五色ヶ原はもちろん、雲ノ平や槍ヶ岳まで360度見渡せる。太郎平小屋から伸びる白く太い登山道が尾根筋に沿って平原を割り、有峰湖の方に続いている。
ここからはたくさんの人とすれ違った。昨日の雷で飛べなかったヘリコプターも頻繁に往来していて、すでに人里に戻ってきた気分になった。
薬師からのガレた斜面を一気に駆け下りて薬師小屋をすぎ、太郎平小屋からのゴツゴツした石畳を足早に下山した。
エスケープルートもなく、やや緊張感のある難しい歩行を求められるのが、マイナールートのゆえんであると感じたが、五色ヶ原の広く美しい草原や、スゴ乗越小屋までの静かな山は訪れる価値がある。室堂に朝イチで入れば2泊3日で行けるし、短い行動時間と下り基調なので体力的にも余裕がある。
楽しい山行だった。
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