
高山から新穂高温泉へ。台風が過ぎ去った後の雲一つない青空が広がり、最高の登山日和だ。

入山は9時と遅め、今日は飛騨沢の右岸を緩やかに遡上し、槍平小屋を目指す。

苔むした切り株に枝葉で顔を拵えてあって、思わず笑顔になった。

白い大岩の転がる大岩を横切る度、穂高岳の極端にギザギザした穂先を見上る。今日は本当に雲一つない。歩いている人は気持ちいいだろうな。

小さな川を越えて、

4時間ほどで槍平小屋に到着。短い工程なれど、それなりに疲労した。

テン場の奥からは迫力の穂高岳を見ることができる。なかなかいい場所だ。

昼食を食べ、山の記録をつけて過ごす。



16時ともなると日光は高い山に遮られ、日陰では少し寒く感じる。昼のうちは夏と何も変わらないと思っていたが、日没の早さや寒さで、着実に秋に近づいていると感じる。
赤く染まる穂先を見届けて、19時頃就寝。20時半には熊除けの鐘が大きく鳴り響いた。

翌朝3時半、南岳への直登に備え、ファミマのコロッケパンとフレンチトーストを詰め込む。

5時出発、荒れ気味と噂の南岳新道へ。しばらく景観のない沢沿いを、途中から尾根に取り付く。

2631ⅿの手前、森林限界を超えたあたりで笠ヶ岳方面の視界が開ける。



後半は、細い尾根に木道のかかったアスレチックな道に変わり、面白みが出てきた。


細い尾根を歩くと心拍が上がる。両脇に茂るハイマツで高度感も薄い。



尾根を降りてガレた広いカールに入る。







再び尾根に戻る。高度感のある橋を渡る。




笠方面から迫る雲に追いつかれないよう先を急いだが、冷たい風が追い上げてきて、南岳小屋に着くころにはすっかり体が冷えてしまった。



南岳小屋は国内屈指の難所である大キレットの北端に位置し、展望台からその険しさを垣間見ることができる。踏み入れる気はサラサラないが、その高低差や切り立った崖の様から、いよいよ常人の立ち入る域を外れていると感じた。

さて、天気が良かったのも朝9時まで、迫っていた雲がとうとう追いついてきて、激しい動きの霧となって視界と体温を奪うようになってきた。

南岳から槍ヶ岳までの快適な稜線歩きは望むべくもなく、たっぷり4時間以上かけて歩きとおすことになる。


西からぶつかってくる風は本当に冷たくて、時折岩陰に隠れて休む必要があった。

3つの3000ⅿ峰を超えるため、それなりに登り下りもあり、中岳のあたりでは高度感のある2連梯子を、へばりつく様に降りた。


13時、やっとの思いで槍ヶ岳山荘にたどり着いた。

風と霧はいっそう強さを増し、山荘の中は人でいっぱいだった。ここにテントを張る計画だったが、風から逃げるように槍沢のキャンプ場まで下ることにした。

既に7時間以上登ってきてクタクタだったが、追加で3時間下る。稜線から外れても暫くは風が弱まることはなく、グリーンバンドのあたりでようやく弱まった。


沢沿いに入ると完全に風は収まった。

槍沢キャンプ場にテントを張り、すぐに夕食を食べ明日の帰り道の算段をつける。

翌朝2時起床、暗い中歩いて上高地へ戻り、朝一番のバスに間に合わせた。

天気の良い初日に尾根まで登れていれば、と思うが、バスの都合もあり仕方ない。南岳新道は結構面白いルートだった。
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